2014年12月2日火曜日

書簡集 2

 十二月二日

 銀杏の落ち葉からは銀杏独特の厭な臭いと、それと同時に葉が踏み砕かれ擦り朽ちてゆくときに発する甘い香りがするように思う。眩しいほど黄色い葉もそろそろ盛りを迎えている。風は硬質な冷たさを帯びるようになった。人々も顔を下に向け、凍えながら歩きゆくさまだ。
 人はどうやら寒いと上を向くのが辛いようだ。いくら厚く着重ねても、首元が冷えるのはやはりつらい。しかし、冬の空を見上げずしていつ私達は空を見上げるのだろうか。夜ならばなおさらである。都会であれど、すべての色が溶けゆくような空を見上げねばならない。見上げぬ者は愚者であろう。
 君はまた、紋切り型の発言をしている、と思ったであろう。構わないのだ。紋切り型のことばを有難がるのは確かに愚かだ。だからといって、紋切り型のことばを一切投げ捨ててしまうのもまたまぬけのすることだ。よいと思ったことを投げ捨てるのではない。よいと思ったことに、紋切り型の表現がたまたま一致したのだ。万事、私が先である。

 君は最近汗をかいているだろうか。冬にも汗をかいたほうがよい。君はどうせ暖かい部屋で本を読んでばかりの生活なのだろう。それではいけない。すこしは動いたほうがいい。風呂に浸かるのもいい。それに本を読みっぱなしでは、何も考えられないだろう。すこし時間をおいて、自分の中でまとめるべきだ。
 これからますます寒くなろう。次の手紙はまた少し遅くなる。冬の空でも見上げて待ってくれ。そちらはこちらよりも星が見えよう。