2014年7月21日月曜日

quantum ということばについて

« Creationem rerum insinuans Scriptura » ... etc. . Postquam Magister in primo libro determinavit de Deo quantum ad rarionem suae naturalis perfectionis, ... .
引用は Duns Scotus の Ordinatio II, d. 1, q. 1 に挿入された文章から。引用部冒頭のギュメによって括られたのは、 Lombardus からの引用だそうだ。そこで、第二文の Magister は Lombardus を指していると考えられる。ここを読む上で躓いたのが quantum (ad) ... という表現である。いちおういろいろと調べてみたので、私と同様の躓きをした人のためにメモしておこうと思う。

 結論からいえば大したことはなく、大きめ辞書を引けば例文も出てくる。 Twitter で、フォロワーからの指摘もあった。ありがたい世の中である。 Perseus digital library には Word study tool というものがあり、そこで quantum を引けばこのようになる。インターネット上で Lewis & Short を引くことができる。非常に便利。 L & S を展開して、 "quantum ad" で検索すれば三件引っかかった。これはすごい。
“denegabit quantum quantum ad eum erit delatum,” Plaut. Poen. 3, 4, 28 
“quantum ad Pirithoum, Phaedra pudica fuit,” as far as concerned, with respect to, Ov. A. A. 1, 744
“quantum ad jus attinet,” Sen. Contr. 5, 34, 16; 3, 16, 1.
どうやら古典期からいくつかの用法があるようだ。 一つ目はすこし違って、 quantum quantum となっている。分かち書きすることがあるのかどうかは知らないが、水谷智洋編の『羅和辞典』によれば、 quantusquantus = quantuscumque で「いかに大きく[小さく]ても、どれほどの量[程度]でも」とある。文脈を追うほどの能力が無いので、ここでは追求はとめておく。

 おそらく、求めている意味は二つ目の例文のように思われる。"quantum ad" で検索していると、多くの用例が見つかった。近い時代では、トマス・アクィナスのものがあったので、それも引用しておこうとおもう。
Et licet indiciduatio eius ex corpore occasionaliter dependeat quantum ad sui inchoationem, ... .
 De Ente et Essentia の第五章からの引用。『中世思想原典集成 第十四巻』におさめられた須藤和夫訳では「……〔人間の〕魂の固体化はその発端に関して、……」とある。上の二つ目の例文と同じような意味の訳例が見つけられた。

 上記『羅和辞典』によると、これに近そうなものは「…の限り」となっているものであろうか。例文には「"quantum ego existimare possum," 私が判断できるかぎりでは」、「"quantum in te est," あなたに関する限り」とだけある。すこしばかり上の文脈に合わせるのは難しそうだと思った。

 もう一度、問題となった文章を見てみる。
« Creationem rerum insinuans Scriptura » ... etc. . Postquam Magister in primo libro determinavit de Deo quantum ad rarionem suae naturalis perfectionis, ... .
「『事物の想像を記述すれば、聖書は……』云々。ロンバルドゥスが第一巻で、神について、彼の自然的完全性の ratio に関して規定したあとで……。」という訳になるだろうか。

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